1. Context — 背景
大手化学メーカーの調達部門。慢性的な過剰在庫の要因を特定し、業務を効率化したいという相談を受け、サンプルデータをもとにした短期の検証を行った。
2. Challenge — 課題
表面的な課題は、過剰在庫の分析に毎回かかる膨大な工数だった。適正在庫率と実績の乖離は品目×月の単位で発生し、単月だけでは評価できない。しかも過剰の原因は二通りある —— 予算より多く買ってしまったのか(調達側)、予算より払出が少なかったのか(生産側)。この切り分けが定型化されておらず、分析のたびに属人的な突合作業が発生していた。
引き受けた問いは、一度の分析を代行することではなく、原因の切り分けそのものをロジックとして固定し、誰がやっても同じ結論に辿り着く仕組みにすることだった。
3. Approach — アプローチ
- 影響の大きい品目の特定 — 適正在庫率からの乖離を数量ベースで可視化し、年間積み上げの面積図で影響の大きい品目を一目で特定できる形にした
- 原因切り分けロジックの設計 — 実績データと適正在庫データを品目コード+月をキーに統合。翌月の払出予定と実績の突合により「生産側に問題があるか」をまず判定し、生産に問題がなければ調達側の意思決定を分析対象に絞り込む、という判定の順序をロジック化した
- プロトタイプ化 — 上記をTableauワークブックとして実装。データを差し替えるだけで毎月更新できる構造にし、ロジックの解説とあわせて提示した


4. Impact — インパクト
この検証で設計したロジックとプロトタイプは、その後、先方の社内体制のもとでの実装に引き継がれた。分析の代行ではなく「原因を切り分ける考え方」そのものを渡したことで、仕組みは先方の手で動き続けている。誰の責任かをめぐる議論を、データが答える問いに変えること —— SCMの現場で最も工数を食う「犯人探し」は、ロジックの設計で解消できる。

