1. Context — 背景
岐阜県大垣市上石津町。牧田川で鮎が豊富に獲れるこの里山で、地元猟師、微生物研究者、料理人、アーティストといった異分野の仲間と共同主催しているリトリートが「¿鮎Ready?」である。クライアントワークではなく、Xcraft自身が運営メンバーとして参画している。
2. Challenge — 課題
メンバーには、それぞれの想いがあった。土と触れる体験、自然と調和した食卓、微生物による分解 —— 根っこで通じ合ってはいるものの、全体を語れる上位のコンセプトが存在しなかった。想いが束ねられていない企画は、一度きりのイベントで終わる。続く場にするには、全員が自分の言葉として語れるひとつのコンセプトが必要だった。
引き受けた問いは、誰かの案を採用することではなく、バラバラの想いを、全員が腹落ちするひとつの言葉に昇華することである。
3. Approach — アプローチ
- 対話の可視化 — 議論に参加しながら、メンバーの発言をMiroボード上でリアルタイムにビジュアル化。誰が何を大事にしているのかを、全員が見える形にした

- フレームによる構造化とコンセプトへの昇華 — 「過去を学ぶ→現在を知る→未来を構想する→現在を変える」の流れで社会の見取り図を描いた。かつて当たり前だった循環型の暮らしが、市場中心の社会で「買って→食べて→出す」という直線に分断された。ならば「分解する」という行為を暮らしに実装し直せば、循環はもう一度つながる —— この構造から、コンセプト「鮎と巡る、いのちの循環を体感する冒険。」が生まれた
- 体験プログラムの設計と運営 — コンセプトを、鮎の収穫から、プロの料理人による調理、食事、そして残渣を微生物で分解するところまでを一気通貫で体験する1泊2日のプログラムに翻訳。各回でテーマを設計し、外部講師とのセッションやパネルディスカッションをファシリテート。ある回ではグラフィックレコーディングで対話がその場で形に残る仕掛けをつくった

Recorded by 海津敦子(@atsu_kaiz) 
Recorded by 海津敦子(@atsu_kaiz) - 循環を体感させる仕掛け — 調理で使った天ぷら油を、発酵と鹸化の力でその場で石鹸に変える「天ぷら石鹸」づくりを体験に組み込んだ。一見ゴミにしか見えない廃油が、微生物の力を借りれば自然を豊かにするものに変わる——「捨てる」が「還す」に変わる瞬間を、参加者が手を動かして体感するための仕掛けである

4. Impact — インパクト
この場からは、次の動きが生まれつつある。初回に参加したアーティストは、地域の廃校を利活用するプロジェクトを始動。大垣市や地元企業と連携して上石津の地域を醸していく大きな動きのなかで、共同での新たな体験プログラムの構想が進んでいる。また、メンバーの仕事のつながりから、ハワイのNPO法人へ現地で活動をプレゼンテーションする機会も生まれた。参加者同士から別のイベントが自然発生するなど、上石津で生まれた関係が、次の企画へと接続し始めている。
イベントの成功を動員数で測るなら、延べ50名は小さな数字だ。しかし、参加した人が次の企画の主体になっていく場は多くない。コンセプトを丁寧に練り上げることが、場の生成力を決める —— Xcraftで実践し続けている作法である。



